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乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ(1) (アクションコミックス(月刊アクション))
書評の続き
前回幾つか、参考書籍を上げていたが、バート・S・ホールの
火器の誕生とヨーロッパの戦争
を忘れていた。リンク貼っといて何ですけど、なんだか2万円近い・・・・・・どうなってるんでしょうかね。昔は普通に本屋で売ってたのに。
とても素晴らしい内容なのに勿体ないことです。
フス戦争についても第四章でしっかりと取り上げられていますが、第三章の「15世紀における黒色火薬」もフス戦争当時の火薬製造事情がよく分かります。
前回のエントリでも紹介した
ミロスラフ・ポーリフカの論文に出てきたコンラッド・カイザー(Conrad Keyser)の論文も色々と引用されています。
(こちらの書物ではコンラート・キーザーという名前になっているので注意ですが)
彼の書物には、車両を使った戦術の他にも火薬製造についても解説しているようで、硝石醸成についての技術的解説としては、ヨーロッパで最初に記載されているとホールは書いています。
ただ、どうやらその内容は曖昧で、混乱しているようですが。
この本を読んでいくと、当時のヨーロッパ内で生産された硝石を利用した火薬が痛みやすかったことや、その威力、生成技術の進展がよく分かります。
そのうち、マンガの中でも暴発のお話や不発の話が出てくるでしょう。
(時代は下って17世紀では暴発で密集しすぎていた小銃小隊が潰走することを防ぐために、かなり疎な隊形を取っています。火縄をぶら下げているので密集度は気をつけないとデスネ)
経済封鎖される中で、硝石を醸成する話なども、時代的に面白いかとも思いますが、さてはて?
そういえば、最近の異世界転生系のマンガやライトノベルでは、火薬製造が頻繁に行われて硝石醸成は、記述されるようになったが、威力を左右する粒化とその諸々に関する話を書いている人はいないなぁ。
閑話休題
さてフス戦争そのものもホールの本には取り上げられております。これも含蓄ある面白い話ですが、彼曰く
「小火器はフス派のさまざまな飛び道具の中では比較的小さな役割しか演じなかったように見える。弩はその三、四倍もあったのだ。もう少し大きい火器のタラスニッツェまたはホウフニッツェがある程度小火器のかわりをつとめた。これらは城壁を破壊する射石砲より小さいが、手銃よりは重く、攻撃側が車両要塞を襲撃しようと思ったときとらねばならなかった密集隊形に対して、それをバラバラに乱すのに必要な弾丸の大部分を発射したようである」
とのことなので、マンガでは大規模使用されてい手銃は少し現実は違うようです。
ちなみにタラスニッツェはチェコ語で台に乗せた中口径の砲、ホウフニッツェは二輪車に搭載した中口径の砲のようです。車両と車両の間に配置されていました。
加えて言うならマンガの時期はまだ叛乱初期なので、マンガで書かれている以上に、現実の戦場におけるフス派軍の武装は多種多様で、雑多であったでしょうし、弩も火器もずっと数は少なかったはずです。
それでも彼らが叛乱初期に勝利できたのは、ホールが書いているようにジシュカが「首尾よく防御することを自分の主な課題とした」からでしょう。
なので
「フス派の戦術上の新機軸を、「野戦砲術」というような言葉を使って特徴づけるのは、魅力的ではあるが時代錯誤敵である。ジシカの新機軸が、火器その他の飛び道具に依存して城壁を守るという都市戦争の趨勢にどれほど厳密に従っていたかを強調するほうがもっと正確だろう」
とも言う文章は重要です。
フス派の戦術は、敵の模倣を招きますが、フス派以上にフス派の戦術に熟達した存在は遂には現れませんでした。彼らは重騎兵を一定以上揃えられないという制約も含めて、徹底的に、防御戦術を追求し、それのみを洗練させていったのです。
このあたりは同年代のイングランドの長弓戦術とも似ており、ホールの本でも、フス戦争の項の後に考察が加わっております。
そうそう、フス派の戦士たちの絵姿を書いている日本語文献もありました。
武器甲冑図鑑
この本のp212-215にハンドガン兵や車陣に使われた車両の絵が載っております。
図書館にあれば是非見るべきですね。
他にも我らがフサールを含め、古今の兵士の姿が描かれているので、各時代の戦争のイメージを掴むのには大変重宝します。
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