ポーランドにおいて、まずフサリアのような騎兵は、基本的に装備は自腹を切らねばなりません。
馬にしろ鎧にしろ、そして翼にしろ、どれもかなり値の張る代物です。
つまり金持ちしか騎兵装備は買えません。
しかしそんな金持ちは少数です。なのに戦争において数は重要です。
「戦いは数だよ、兄貴」と有名な言葉にあるとおりです。
で、どうするかというと、ポーランドの場合、貧富の差が貴族(シュラフタ)の間でも激しかったので、金持ちシュラフタが全部持つことにしたのです。
(勿論、勝利の暁には莫大な戦利品を我がものとして帳尻をあわせます。戦争は投機的事業であったわけです。貴族に大切な名誉とか面子とか、という側面もありますが)
流れを上げると次のようになります。
国王の承認を受けた中隊長は、部隊定数を与えられた予算の中で揃えることになります。
しかし与えられた予算は中隊長一人で、全ての兵員を揃えて、その装備を整えられるほどの規模ではありませんでした。
また、一人で全部の面倒を見るのも無理です。
そこで代わりに数名の裕福なシュラフタを呼び集めます。
そして彼ら数名の裕福なシュラフタが、また同じようにして部下を(2~6名程度)集めました。
中隊長が給料を支払うのは、この数名のシュラフタだけです。
それぞれが集めた部下の数の比率で予算が割られ、分配されるシステムです。
そしてその下に付く部下たちに対しては、このシュラフタたちが装備の世話から飯の世話までの面倒を見ることになります。
この数名の裕福なシュラフタはtowarzyszeと呼ばれています。英語だとcomradeと訳される事が多いようです。
日本語で直訳すると、戦友とかそういう意味ですね。
つまり、それ以外は簡単にいってしまえば、フサリアの「戦友」ではないのです。
もちろん、下位の兵士たちも翼を背負っていますが、当然その装備はtowarzyszeには格段に劣ります。
そしてその関係性は当然のことながら、主人と従卒、下手すると下僕ということになります。
当然、「我こそは名誉あるフサリアである」なんて言えるわけないですね。
だから勿論、部隊の兵員名簿にも名前は載りません。載るのはtowarzyszeだけ。
なのでフサリアを見かけたら装備を見てください。
見窄らしい装備なら、彼らはフサリアではありますが、厳密に言ってしまえばフサリア隊に所属する兵士です。ガンダム部隊にいるジムです。
ご注意を!!!
ちなみに近世ヨーロッパの軍隊は低い身分から成り上がる望みを得られる最大の場所であり、それはポーランドでも例外ではありませんでした。
ですので、戦利品や指揮官の目にとまるような働きをした下位の兵士でも、自分で自分の装備を用立て、加えて部下も用意できる資金を獲得したならば、towarzyszeになることが出来ました。
その場合は、まずはもう少しお安い資金で装備が調えられる、pancernyと呼ばれるポーランド・リトアニア特有の中騎兵のtowarzyszeとなります。
そして更に成功すれば、かつての下僕も晴れて、フサリアの兵員名簿に名を連ねる「戦友」になれました。まぁごく稀なことですが、道はあったということですね。

Polish Winged Hussar 1576-1775 (Warrior)